【温泉卵のできる理由】黄身ねっとりの温泉卵の作り方と歴史と由来は?

 温泉卵のできる理由を知りたいと思いませんか?

 温泉地の朝食で必ずといっていいほど提供され、あのトロッとした食感に思わず微笑んでしまいますよね。また、料理や丼ものの脇役として欠かせないほど、味が決まる一品としても大活躍です。

 この記事では、「温泉卵ができる仕組み」や、「自分好みの温泉卵を上手に作るポイント」について説明しています。

 ぜひ、温泉卵のできる理由を知って、自分の料理に活かせる雑学のひとつとして役立てていただけると嬉しいです!


この記事を担当したのは、トピックスラボ運営事務局のキャップ末永です。

温泉卵はなぜ温泉なのか?温泉卵の由来と定義と発祥の歴史は?

 温泉卵、おいしいですよね!口入れるとなめらかで、白身のトロッとした食感や黄身ねっとりの食感がたまらないわけですが、この食感が味覚に与える影響が大きい食べ物だと思います。朝食に並んだり、丼ぶりものの上に添えられていたりと、この温泉卵が一品あるだけで、意外とテンションが上がったりするものです。

 その温泉卵ですが、なぜ温泉なのか、疑問に思っている方はいませんか?確かに、温泉地などでよく目にする食べ物だったりするので、そこから温泉という名前が付いたのかな・・・というくらいの感覚の方が多いでしょう。

 いろいろと調べてみると、やはり”温泉”に由来があることが分かりました。

 温泉卵は、基本65℃~68℃程度のお湯に30分程度浸けておくとできるのです。湧き出す源泉の湯温がこの温度帯に近い場合、これに浸けておくだけで温泉卵ができることから、温泉地の旅館などで提供されることが多い為、「温泉卵」という名前で呼ばれるようになったことが由来であるようです。

 また、この由来には諸説あるようで、後ほどご紹介したいと思います。

温泉卵の定義

 温泉卵の定義は、次の通りと言われています。

 

卵黄部分は半熟、卵白部分は半凝固状態に茹でた鶏卵

♪引用:wikipedia

 温泉卵の定義などをいろいろと調べたのですが、実は明確な定義がないようなのです。これは日本調理科学会の会誌でも記されております。

 実際に、温泉地の温泉卵も、市販の温泉卵も、よく見れば白身と黄身の固さが違いますし、凝固の程度も様々ですからね。

温泉卵の発祥

 温泉卵の発祥については、諸説あるのが実情のようです。

 その中でも特に有力なものは、福島県福島市にある飯坂温泉が発祥というものです。この飯坂温泉は、開湯が2世紀頃で、日本武尊(やまとたけるのみこと)が立ち寄ったと言われる奥羽地方最古の温泉です。奥州三名湯に数えられ、他に宮城の鳴子温泉、秋保温泉があります。

 この他にも、群馬県の川原湯温泉が発祥という説も有力です。

 温泉卵の歴史を調べていくと、由来や発祥など多くの情報にたどり着きます。温泉卵についての言い伝えも各地に散在していて、それが有名な温泉地に紐づいていることが分かりました。

 これらを突き詰めていくのもおもしろいかと思いましたが、それよりも各温泉地によって、興味深い言い伝えがありますので、それを楽しむ気持ちを優先にした方がいいと感じました。

 温泉卵の歴史を紐解くのもおもしろいものですが、まずは温泉地ごとの名物である温泉卵の特徴を知って、その土地土地の温泉卵を味わっちゃいましょう!

温泉卵とラジウム卵の違いは?

 福島県の飯坂温泉というと、奥州三名湯のひとつに数えられる奥州最古の温泉です。この飯坂温泉の名物が「ラジウム卵」です。

ラジウムとは、原子番号88の元素で、この成分を含む温泉は関節痛や神経痛に効用があると言われている。

 このラジウム卵は、白身がトロトロで黄身は半熟状態、まさに温泉卵そのものといった特徴があります。また、温泉特有のほのかな香りも感じられ、飯坂温泉の名物になっています。

 温泉卵とラジウム卵の違いは、特にないというのが答えですね。温泉卵は温泉で茹でられ、ラジウム卵はラジウム温泉で茹でられたものになります。強いて温泉卵とラジウム卵の違いを挙げれば、温泉卵は家庭のお湯でも作られますが、ラジウム卵はラジウム温泉でしか作れません

 飯坂温泉は、日本で初めてラジウムの存在が確認された温泉です。この温泉地のラジウム温泉で茹でられたラジウム卵は、名物と呼ぶのにふさわしく、おみやげとしても喜ばれます。このラジウム卵を食べて、”違い”が分かる男になりたいものですね。

温泉卵と半熟卵の違いは?

 それでは、温泉卵と半熟卵の違いは何なのでしょうか?

 温泉卵の定義は、”卵黄部分は半熟、卵白部分は半凝固状態に茹でた鶏卵”ですね。一方の半熟卵はどうでしょうか?

鶏卵やウズラの卵などを加熱した料理のうち、

固ゆでのゆで卵のような完全な凝固を避け、柔らかい状態を保ったものを指す。

♪引用:wikipedia

 簡単に説明すると、卵白部分は凝固状態、卵黄部分は半熟状態となっているのが半熟卵ですね。

 温泉卵と半熟卵の違いは、卵白部分の凝固状態が違うというのがいちばん分かりやすいでしょうか?温泉卵は、卵黄も卵白もトロッとしているのが特徴で、半熟卵は卵白がしっかり固まっていて、半分に割ると卵黄がトロッとしているのが特徴です。

 その他の温泉卵と半熟卵の違いは、殻を剥いたあと、手で持てるのが半熟卵で、手に持てないのが温泉卵です。この説明の方がしっくりきますね。

温泉卵の有名な温泉とは?

 温泉が由来となる温泉卵は、各地の温泉地で名物になっています。いわゆる料理名として”温泉卵状態”になっているものもありますが、”温泉地で売っているゆで卵”として名物になっているものもあります。

神奈川県箱根温泉郷の大涌谷の黒たまご

♪引用:大涌谷くろたまご館より

 ゆで卵系温泉卵で日本で最も有名なのは、箱根温泉郷の大涌谷で販売されている「黒たまご」です。この卵を1個食べれば寿命が7年延びるという言い伝えがあります。

 この温泉卵の特徴は、真っ黒であることですが、この黒色は卵の殻に付着している鉄分と温泉成分の硫化水素が反応して硫化鉄になったものです。日持ちはしませんが、この黒色が特徴でおみやげにも喜ばれています。

長崎県雲仙温泉の雲仙地獄温泉たまご

 温泉地としても有名な雲仙温泉の地獄谷から湧き出る蒸気で蒸し上げている「雲仙地獄温泉たまご」です。これもゆで卵系温泉卵です。雲仙地獄工房で作られ、雲仙地獄茶屋で食べることができます。

 温泉特有の硫黄の香りがして、温泉でできた塩がついているのが特徴です。

大分県別府温泉の地獄蒸したまご

♪引用:明礬温泉 岡本屋より

 大分の別府温泉では、別府地獄めぐりが有名で、それぞれの地獄で作られている温泉卵が有名です。こちらもゆで卵系温泉卵で、地獄と呼ばれている蒸気熱で蒸し上げています。地獄と呼ばれるのにふさわしいほどの蒸気熱の為、たまごの白身が茶色に変色しているのが特徴です。

 地獄の中でもコバルトブルーの湯色が鮮やかな海地獄では、唯一温泉の中で茹でられた温泉卵が食べられます。

温泉卵の栄養は温泉に放置するだけで変化する?

 卵は、幅広い料理に活躍する万能な食材です。また、必要な栄養素がバランスよく含まれている完全栄養食としても注目を集め、健康や美容への効果も期待できる食材です。

 そんな卵の栄養を余すところなく摂取するには、温泉卵という状態がいちばん良いとのことです。温泉卵のトロッとした状態が消化率や栄養の吸収率が最も効果的なのです。身体に負担を掛けずに栄養を素早く吸収できるので、体調がすぐれない時やスポーツの前後などに食べるのもおすすめです。

 この栄養たっぷり万能食材の卵で温泉卵を作る時は、長い時間温泉に浸けることになります。この場合、温泉卵の栄養は温泉に放置するだけで変化してしまうのでしょうか?

 基本的には、栄養価はさほど変化しないというのが定説です。ただし、熱に弱いビタミンが過熱の過程で失われることがあるそうです、通常は殻付きのまま調理をすることになりますので、野菜のように茹で用のお湯に溶け出すようなことは無いようです。

 よって、温泉卵の栄養は温泉に放置するだけで変化することを気にする必要はなさそうですね。

温泉卵ができる理由とは?

 温泉卵ができる理由とは、白身と黄身が固まる温度の微妙な差にあるようです。ブランド卵「ヨード卵・光」のウェブサイトで見つけたのでご紹介します。

 その秘密は、白身と黄身が固まる温度の微妙な差にあります。

 白身が固まり始めるのが60℃前後ですが、80℃近くに上がらなければ完全には固まりません。一方、黄身は65~70℃前後で固まり始め、この温度を保てば固まります。

 この性質を見事に利用したのが、「温泉たまご」というわけです。 

 ♪引用:ヨード卵・光オフィシャルサイト「教えて!たまご先生」より

 温泉卵ができる理由とは、白身が固くなる温度と黄身が固まる温度を見て70℃に到達する前の温度、つまり65℃~68℃程度の温度で加熱すると温泉卵ができるのです。この微妙な温度帯でしか温泉卵ができないとなると、もう科学の世界ですね。

 また、ヨード卵・光のオフィシャルサイトでは、温泉卵の由来についてもご紹介されています。

 卵に加えることで固まり始めるのは、まず外側からですがその常識を打ち破った料理が「温泉たまご」です。

 温泉たまごは、黄身はほどよい固さですが、白身はまだどろっとしています。つまり、「シンから先に温まる」ということで、「温泉たまご」と命名されたようです。

 ちなみに、温泉のお湯は常に一定の温度で湯が湧き出ているので、65~68℃の温泉湯であれば30分くらい温泉に浸けるだけでできてしまいます。 

 ♪引用:ヨード卵・光オフィシャルサイト「教えて!たまご先生」より

温泉卵のプロの作り方とは?上手に作るのに時間と温度に裏技はあるのか??

 日本調理科学会の会誌に、温泉卵に関する研究報告があります。

 このレポートは、自身の好みの温泉卵を作ることを目的に、時間と温度の組み合わせ的な裏技が報告されたものになります。まずは、次の図を見てみましょう。


♪引用:日本調理科学会誌(J. Cookery Sci. Jpn.) Vol. 52,No. 5,345~351(2019)〔資料〕

♪引用:日本調理科学会誌(J. Cookery Sci. Jpn.) Vol. 52,No. 5,345~351(2019)〔資料〕

 上の図は、”加熱温度、加熱時間と外観”を、下の図は、”加熱時間、中心温度と断面”をそれぞれ表したものになります。

 温泉卵のプロの作り方は、このような研究をした上で作るといいのですね!また、この資料のおかげで、家庭でも温泉卵のプロの作り方を真似することが可能です。

 ぜひともこの資料を基に、時間と温度の組み合わせが裏技になりますので、自分好みの温泉卵を作ってみてはいかがでしょうか?

温泉卵を鍋で作る時の温度は60度で何分?

 温泉卵を作る為に、60度のお湯で何分加熱すればいいのか?・・・という前に、60度という温度帯では温度が低すぎて比較的凝固点が低い白身でさえ固まりません。何分というより、30分以上加熱してもほぼ生という状態です。

温泉卵を鍋で作る時の温度は65度で何分?

 温泉卵を作る為に、65度のお湯で何分加熱すればいいのか?

 一般的に、温泉卵を家庭で作る時の温度帯でいちばん多いのがこの温度帯なのではないでしょうか?この温度で何分加熱すればいいのかというと、上の表で見た場合、およそ20分~30分程度と言えそうです。この時間帯の中で、よりトロッと柔らかめが好みの方が20分程度、トロッとしていながらもある程度の弾力が欲しい方は30分程度が理想と言えるでしょう。

温泉卵を鍋で作る時の温度は70度で何分?

 温泉卵を作る為に、70度のお湯で何分加熱すればいいのか?

 温泉卵を作る場合、お湯の温度が70度を超えてきたあたりから、白身も黄身も凝固の程度が強くなってきます。温泉卵の固さの中でも、より柔らかくトロッとした食感が好みの方は何分が適切かというと20分程度、長くても25分を超えない程度と言えそうです。

 また、65度の湯温の時と同じように30分程度の時間をかけてしまうと、卵黄が球状に凝固しはじめます。卵黄のトロッと食感を残したい方は20分程度が理想です。

温泉卵を沸騰したお湯を使って放置でも作れる?大量は避けるべき?

 温泉卵を作る方法としては、沸騰したお湯に放置する方法もあります。

 鍋を火にかけてお湯が沸騰するのを待ちます。沸騰したら火を止めて、卵を静かに鍋に投入します。沸騰したお湯を使って放置する方法では、温泉卵の固さの調整は時間のみです。

 15分程度を経過すれば、卵黄がトロッとする程度でかろうじて形状を保てる状態となるくらいまで凝固します。注意点として、沸騰したお湯を使って放置の場合は、お湯はたっぷり準備することと、卵を大量に入れないことです。卵の数に対してお湯が少なすぎると、凝固に必要な温度を保つことができません。卵を大量に入れた時も、卵の温度でお湯が冷めてしまいます。

 目安としては、家庭用の片手鍋の小サイズであれば卵3個程度が目安で、失敗がほとんどありません。

温泉卵をレンジとめんつゆで時短調理!簡単で早い爆発しない作り方

 温泉卵は、レンジで作ることも可能です。いわゆる時短調理ですね。レンジを使えば簡単で早いですし、時間が無い方にはおすすめです。注意点は、レンジの場合はそのまま加熱すると爆発しますので、ちょっと手を加えてレンジでも爆発しない作り方ができます。

  1. 卵を直径7~8㎝程度で深さ5㎝程度の耐熱容器に割り入れる。
  2. 卵が完全にかぶるくらいの水を注ぎ入れる。
  3. 卵黄に爪楊枝で穴を1ヶ所開ける。
  4. ラップをかけずに、電子レンジに入れ600w45秒で加熱する。
  5. 加熱後、水を切る。

 ※加熱不足の場合は、5秒ずつ延長して様子を見る。

自家製温泉卵は日持ちしない?殻が割れたままで保存の場合は衛生的に問題ある?

 自家製の温泉卵を作った場合、日持ちはしないのでしょうか?

 まず、衛生的に問題あるかどうかですが、温泉卵の調理方法は65度~70度で20分~30分程度の加熱時間になります。一般的には、この条件の下では死滅する菌がほとんどです。その為、衛生的に問題あるわけではありませんが、卵に元々含まれているリゾチームと呼ばれる抗菌物質が加熱によって破壊されています。温泉卵は生卵の状態よりも傷みやすい状態ですので、自家製温泉卵の場合は、1~2日で食べ切る必要があるでしょう。

 また、殻が割れたままで保存は危険です。殻が割れたままでは割れた部分から雑菌が入り込んで卵を汚染してしまう可能性があります。できるだけ早く食べ切ってしまいましょう。

市販の温泉卵をもう一度茹でるとどうなる?

 市販の温泉卵をもう一度茹でるとどうなるでしょうか

 これ、実はゆで卵になるんです!ゆで卵を作る工程の途中の状態が温泉卵ですので、再加熱をはじめると、卵黄や卵白が凝固していきますので、理論的にも説明がつきます。

 実際に、我が家ではおでんを作る時に温泉卵と気付かずに卵を茹でてしまった時があったのですが、殻を剥いてみると普通のゆで卵ができていました。

温泉卵を強く振るとどうなる?温泉卵をきれいに割るための裏技公開!

 温泉卵を強く振るとどうなるのでしょうか

 実は、これは知る人ぞ知る温泉卵をきれいに割るための裏技なのです!

 温泉卵の殻を割ると、必ずと言っていいほど白身が殻に残ったままになることが多いですよね?毎回、殻に白身が残ってしまうのでもったいないと思っている人は私だけではありませんね。

 このもったいないを解決する方法が、温泉卵を強く振るという裏技なのです。温泉卵を割る前に5秒ほど縦に強く振ると、白身は殻にほとんど残りません

 卵を振るという動作はほとんどの方が未経験です。必ずしっかりと温泉卵を握ってください。結構な割り合いで振り飛ばしてしまいますよ(笑)。また、振ること自体は強めに振っても問題ありません。何回か振ると、カポッカポッと鳴る音が止む瞬間がありますので、裏技が完了した合図です。ぜひ、お試しください。

【温泉卵のできる理由】まとめ

 いかがでしたか?

 温泉卵のできる理由は、卵白が固まる温度と卵黄が固まる温度の微妙な差を活かして、この性質を利用して調理をしたから!ですね。温泉地での名物というイメージがありますが、実は家庭でも温度と時間に気を付ければプロ並みの温泉卵を作ることが可能です。ぜひ、自家製温泉卵をご自身のレシピに加えてみてください。レパートリーが増えますね。

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